(ケ)富山、昆布食文化の王道
鱈と昆布の煮物
昆布巻きかまぼこ
たけのこと昆布の煮物
斗棒(とぼ)の昆布もち
さしみの昆布〆
たらの子付け
山菜の昆布〆
おぼろ昆布おにぎりと鱒ずしおにぎり
ずっと昆布の消費第一位を守っていた沖縄は、近年急速に食生活が欧米化し昆布を以前ほど食べなくなってしまったそうです。平成14年の沖縄の昆布消費額は1328円。全国平均を下回っています。長年培われた食文化が崩壊していくというのは残念なことです。長寿の由来といわれた沖縄の昆布料理の復活を影ながら願っています。
沖縄では昆布をだしには使わないそうです。昆布を煮出した汁は棄ててしまうとのことです。また、昆布を豚肉との組み合わせで摂取することが多いと聞きました。だいぶ富山の食べ方とは違いますね。沖縄では棹前(さおまえ)昆布をよく使うそうです。棹前昆布は若くて短い昆布で、料理したときに煮崩れしにくく弾力性に富んでいて甘味のあるよい味がでます。これを豚肉といっしょに炒めたり、煮たりするそうです。沖縄料理には「医食同源」の伝統的な理念があり昆布もまた健康維持に欠かせない良薬と考えられていました。
富山には黒部の名水で育った豚の「黒部ポーク」なるおいしい豚肉がありますので、ぜひ 富山産豚肉で沖縄の昆布料理を試してみたいものです。
昆布と豚肉を炒めた沖縄の郷土料理 ク−プイリチーは血液を浄化し血管を強く
する効果があるお料理だそうです。沖縄の食文化には食=薬とする伝統があります。
富山ではいろいろな昆布を用途に応じて使い分けているのが特徴だと思います。たとえば、
だし
用には羅臼昆布や細布(ほそめ)昆布、
昆布巻き
や
たけのこ・大豆・さといもの煮物
には柔らかい長昆布や棹前昆布、
さしみの昆布〆
には真昆布、
斗棒(とぼ)の昆布もち
には刻んだ細布昆布や真昆布という具合です。水に浸した昆布に甘みをつけた味噌をのせて焼く
昆布田楽
、 同じく昆布の上に甘エビをのせて醤油・酒をふって焼く
甘エビの昆布焼き
には肉厚で固めの羅臼昆布を使います。(昆布を焼き網の代わりに用いる野趣あふれる昆布料理。香りにやられてしまいますね。)
自家製みその表面にも昆布をしく
家庭が多いですが、これにも羅臼昆布がよく使われています。
市販の
昆布かまぼこ
に使う昆布には宇賀真昆布を使うと聞きました。小さくカットして市販されている
おやつ昆布
には羅臼が使われています。(おやつ昆布は子供に人気があるだけでなく、髪に悩みのあるおじ様方も信仰に近い心情からこれを食べておられます。それから禁煙対策にも効果が高いとのこと。ぜひお試しください)。また、昆布を削って作る
おぼろ昆布
や
とろろ昆布
には羅臼や宇賀真昆布などの固い昆布が使われているそうです。
一説によれば昆布は、細布(ほそめ)昆布―宇賀(うが)昆布―元揃・三石昆布―長昆布・棹前昆布―養殖昆布の順に時代を追って流通したそうです。これは昆布漁場の開拓の歴史、つまりそれぞれの昆布の産地がいつの年代に開拓されたかに関係します。昆布は産地によってまったく味や質が異なります。
さまざまな種類の昆布がそれぞれの持ち味を活かしながら多岐にわたって使用されている富山の食文化は、富山の人が如何に古い時代から長く深く昆布と関ってきたかを物語っています。沖縄の昆布料理が長昆布・棹前昆布を偏重して使用するのに比べれば、重層的で複雑なのが富山の昆布文化の特色と言えるでしょう。
スーパーの昆布売り場。需要にこたえて広いスペースを使っている。
このように、沖縄と富山の昆布文化はそれぞれに個性的で一致するものではありませんが、「昆布をたくさん食べる」という共通点がありました。そして、沖縄と富山とのもうひとつの共通点は地元では「昆布が採れない」ということです。昆布は寒冷地の海に生息する海草ですから沖縄のさんご礁の海では採れないのはもちろんですが、富山湾でも昆布は採れません。富山での昆布の消費が卓越していることを知った私の友人のひとりは「富山湾は昆布の群生地なのだ」と信じていましたが誤解です。
なぜ、昆布の採れない沖縄と富山でさかんに昆布を食べる食文化が誕生したのでしょうか。私たちはふだん昆布を何気なく食べていますが、よく考えると富山県人が、ずば抜けて多く昆布を食べているのは不思議なことです。富山県人が「ぶり」「いか」「たら」「もち」「米」をよく食べ「日本酒」をよく飲むことと、「昆布」をよく食べることとではだいぶ意味が違います。
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