(ア)伝統的な富山の地みそってどんなみそ? |
わたしたちが毎日のように使っている味噌。富山にお住まいの方なら、地元富山のメーカーのものをお使いのかたが多いかと思います。「越中みそ」の名で売られていますね。しかし、それが富山に昔から伝承されている味噌かといえば必ずしもそうではありません。お年寄りからこんな声を聞いたことはありませんか? 「スーパーで売っているみそは、わしの小さい頃の味噌とちょっこちごー(少し違う)。昔の味噌が食べてみたい。」
さて、伝統的な富山の味噌ってどんな味噌なのでしょう? このお話では、富山の味噌の特長とそれが生み出された歴史背景について私なりの考えを述べてみたいと思います。
味噌はご存知のように使用する麹(こうじ)の種類によって、大きく「米みそ」「豆みそ」「麦みそ」「混合みそ」の4タイプに分類されます。富山の「越中みそ」は「米こうじ」を使用した「米みそ」です。「米みそ」は全国の広い地域で作られています。しかし、富山の味噌には、他の地域の「米みそ」とは一線を画した、独特の味と香り、そして形があります。
昔から伝わる富山の味噌とは,「水分多く、塩分高く、麹歩合(こうじぶあい)高く、そして2年、3年をかけてじっくりと発酵熟成させた味噌」です。新潟や信州の味噌ように味噌玉は作りません。大豆は煮るのが一般的です。大豆の煮汁は捨てず米こうじ・塩とともに、潰した煮大豆に加えます。仕込んだ後に石の重しはのせず落し蓋をする程度です。味噌汁にすればさっと解け、あっさりしていて富山湾のキトキトの魚よく合います。香りが高く、味噌の香りをかいだだけでも食欲がでてご飯が進みます。味噌はよく熟れてくると赤褐色になり、さらに熟成が進むにつれ、「みそだまり」がにじみでできます。この「みそだまり」は醤油の代用品になるほどの旨みに富んだものです。あまり水分が多く柔らかいので昔は「味噌を買いに行く」、というとお鍋を持って行き、おたまですくって分けてもらったといいます。名付けるとすれば「タプタプの塩くどみそ」と言えるでしょうか。そして富山みそは「みそだまり」がたっぷりとれるのがポイントです。
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仕込んだばかりの仕込み味噌。白い細かい粒は麹。北陸は日本屈指の米どころ。地元の良質の米を活かして味噌の米麹の割合も高い。熟成が進むにつれ味噌には「たまり」がにじみ出てくる。
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塩分・水分の比較
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塩分 | 水分 |
現在の平均的な米みそ淡色辛味噌
日本食品成分表より |
12.4% | 45.4% |
現在の弊社味噌 |
11.8% | 43.5% |
昔なからのタプタプの塩くどみそ |
16%前後 | 60%前後 |
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