・富山干柿
 富山にみのりの秋が訪れます。散居村で知られる砺波平野。南砺とよばれる福光町や城端町の里には、秋になると三社柿(さんじゃがき)がたわわにみのります。稲の収穫を終えて静寂の季節を迎えた散居村の田園風景。天高く澄み渡った秋空に日の光を浴びて輝く三社柿。郷愁感のあふれる美しい富山のワンシーンです。
 秋も深まった11月、南砺の農家では三社柿の収穫が始まります。三社柿は生食用ではなく、干柿に使われる完全渋柿です。富山名産品のひとつであり[富山干柿]の名で全国に出荷されます。医王山から吹き降ろす強い風が干柿作りに向いており、南砺の農家では三社柿の栽培と干柿づくりがさかんに行われています。三社柿はこの地方独特の品種であるとのこと。大変渋の強い品種です。干柿は渋の強い柿ほど甘いものに仕上がるのだそうです。三社柿の干柿は、甘味が豊かで果肉が柔らかく、赤みを帯びた美しいあめ色をしています。そして、表面全体が粉をまぶしたように真っ白です。別名「白柿」とされるのはこの白い粉に由来しています。この白い粉の正体は「果糖」。乾燥にともなって柿に含まれる果糖が表面で凝縮、結晶化したものです。砂糖のない時代には、この白い粉を小刀で削り取って集め、大変貴重な甘味料として扱われていたそうです。ときどき、白い粉をかびと間違えて干柿を棄ててしまう人がおられるとのこと。お間違いのないように。この白い粉こそが糖度の高いおいしい干柿の証なのです。
 福光町には、富山干柿出荷組合があります。南砺の農家で作られた干柿は全てこちらに集荷され、厳重な品質検査の経た後、富山特産品[富山干柿]の名を付されて全国に向けて出荷されます。富山干柿出荷組合は組合員350名の大所帯です。こちらの高瀬さんに干柿の作り方お伺いし表にまとめてみました。
収穫 11月下旬ころに収穫する。未熟な柿はよい干柿にならないのでちょうどよい成熟の時期を見極める。
皮むき・へた取り 皮むき・へた取りが終わった柿は2個ずつ吊るしひもの両端に結んでバランスよく竹の棒に吊るしていく。
いおう燻蒸 カビ止めのため、室に入れいおうで燻蒸する。
天日干し 20日間ほど行う。霧やガスにあたると干柿が黒ずんでしまうので、柿はさやガラス室に柿を吊るす。これで渋の八割が抜ける。
手もみ整形 1個ずつ丁寧に手もみをして形を整えるとともに余分な水分を外に逃がす。
火力乾燥 練炭の火で乾燥 。5・6回繰り返す。渋が強い柿ほど白い粉が多くでる。
出荷 梱包技術が進んでいる。自動梱包機11機を備える最新の梱包技術は全国でも類を見ないもの。12月の出荷シーズンにはこの11機がフル稼働し、柿1個ずつが丁寧に袋詰めされ全国に向け出荷される。
 美しい色をした柿を見て「おいしそうな柿だ!」と思って食べてみると、口いっぱいに渋柿独特のギシギシガシガシが広がったという経験が誰にもあるでしょう。そんな時は渋柿を見てむっとし、また迂闊にも食べてしまった自分に嫌気がさします。そして思います。「なぜ渋柿なんてあるのだろう。すべて甘い柿ならよいのに」と。しかし、渋柿には人の手をかけることでおいしく食べる方法があります。また、とても役に立つ柿渋を精製することができます。人はいつ、そのことに気付いたのでしょうか。前項でお話した柿渋、そしてこの干柿、渋柿にまつわる文化は奥が深いですね。
 干柿は発酵食品ではありませんが、「柿」のつながりで今回取り上げてみました。干柿はおいしいだけでなく、二日酔いに効く・胃腸の消化を助ける・高血圧を予防するなどの効用もあるそうです。そのままお茶受けとしていただくのもおいしいですが、お料理にも活用してみてください。弊社でも郷土料理のコーナーでお料理の例を紹介したいと思います。

忙しい干柿の出荷が終わると南砺の山里はもう年暮れ。そろそろ深い雪の季節が訪れます。

富山干柿出荷組合連合会
939-1692富山県西砺波郡福光町高宮1248  電話0763-52-0078
ガラス室
柿はさ

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