(ク)昆布大好き富山県人

  確かに北陸では昆布だしをよく使います。
お雑煮も昆布だしのすまし汁です。我が家でも年の初めに「よろこぶ」につながる縁起のよい昆布でだしをとり、シンプルなすまし汁で昆布だしの香りと風味を味わいます。北陸地方のお雑煮の具やもちの形は各家庭によって差異があり一律のものではありませんが、「昆布だしを使う」という点では一致しているようです。そしてお雑煮の味付けに甘口醤油は欠かせません。

 とくに富山県はよく昆布を料理に使う所。昆布の消費日本一を誇っていた沖縄をぬいて今では富山が一番昆布をたくさん食べる県です。下のグラフにみるように 富山市の昆布の消費額を例にとれば二位の福井市を大きく引き離して、堂々の第一位。突出しています。全国平均のなんと約2.4倍の消費額です。
お雑煮
我が家のお雑煮は、なると巻きセリ・ゆずに角もちと、
とてもシンプル。だし用に昆布を惜しまずたっぷり使う。
にしんの昆布巻きには柔らかい長昆布、棹前昆布が使われる

 昆布は、とても体によい自然食品。腸内を浄化して高血圧・動脈硬化・ガンなどの成人病の予防し、老化防止に役立つ効果があるそうです。また、ロー・カロリーで繊維質が多くダイエット効果が高いとのこと。「では、昆布の摂取量の多い富山の人ってスマートなの?」と思われるかもしれません。残念ながら自分はじめ、まわりを見る限り、「はい、そうです。」とは言えないですね。実は富山はもちの消費額日本一でもあるのです。おいしいもち米の取れる富山ではおもちやおこわの味も格別。ついつい食べ過ぎてしまいますね。(当社ではおこわセットの販売も始めましたのでそちらも宜しくお願いします) お米の消費額も上位です。日本酒の消費も毎年しっかり上位にランキングされているとのこと。ちなみ富山はぶり・たら・いかそれから意外にもコロッケの消費額日本一だそうです。そして何より水と空気がうまい。何を食べても血となり肉となるわけです。ということで富山ではダイエットなんて言っていられません。あっ、もちろんスマートな方もおいでますのでくれぐれも誤解のないように。(それにしてもコロッケ日本一とはとても不思議な富山県人)
富山県ホームページ「とやま統計ワールド」より昆布の支出金額上位五位までの県庁所在地(平成14年)
 さて、昆布のお話に戻ります。昆布はよく富山の料理に登場します。そして、甘口の醤油味で味付けをします。
 ブリやカレイ、タラの煮物をするのに私たちはたっぷりと昆布を敷いて醤油で甘辛く煮ます。たけのこや大根・さといも・大豆なども昆布と醤油で甘く煮ます。このとき昆布も食べてしまうのが富山の原住民族。にしんの昆布巻きなどは、昆布そのものを食べる富山の郷土料理です。昆布巻きも甘味のきいた醤油味がおいしいですね。
 富山の昆布料理に昆布じめがあります。サス・ヒラメ・イカ・タラの刺身や白えび・甘えび・ホタルイカなどの魚介類を昆布で〆ます。また、わらび・すすだけなどの山菜類も昆布で〆ます。昆布で〆ることで食材の保存効果があるだけでなく、昆布の風味が食材に移り食材のエキスが昆布に浸透し相互の味が融合しあって絶妙の味になります。わさびかしょうがをおろして甘口醤油をちょこっとつけて食べるとおいしいです。昆布の風味と甘口醤油はすばらしいコンビネーションで富山の食材を引き立てます。酒を一献いきたいところですね。最近は昆布からお刺身をはずして昆布を棄ててしまう人が多いですけど、生粋の富山の原住民族の食べ方では昆布〆の昆布も食べるのです。
 甘口醤油の双璧である九州地方でも昆布をよく使います。県庁所在地ではないのでこのグラフにはありませんが、北九州市は二位の福井を上回る2086円です。そして長崎市が1483円/鹿児島市が1398円/と全国平均以上です。北陸の富山市・福井市・金沢市に見られるような顕著な傾向ではありませんが、九州地方だけでなく5位の山口でも甘口の醤油が広く使われていることからも、甘口醤油を愛用している地域と昆布を多く消費する地域とはほぼ一致しており「昆布だしとの相性論」はやはり説得力があるように思われます。
 しかし、考えてみると「味の相性」などとは曖昧なもの。その組み合わせに人間の味覚が慣れてしまった結果、「相性がよい」と思うようになったのではないでしょうか。長い歴史のなかで昆布と甘口醤油が、いつもワン・セットで使われ続け習慣化していたことが「昆布だしとの相性説」の根拠たるものではないのでしょうか。
 今回のお話では、昆布の流通の歴史を探ってみましょう。昆布流通の歴史のなかに甘口醤油の形成・発展の謎を解く糸口があるはずです。


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