まとめ
 3回にわたって甘口醤油のルーツを考えてきました。キリシタンの食文化の影響、昆布と砂糖の交易の影響、そして奄美の輸出用醤油のこと。書き始めたときには、甘口醤油からこんなにお話が広がるなんて夢にも思いませんでした。甘口醤油は全国的にみれば、ごく小さな商圏にとどまる地域性の強い醤油なのですから。ある雑誌で「過疎地にみられる独特の醤油」という記述をも私は見たことがあります。
 しかし、そのルーツを尋ねてみれば、こんな興味深い醤油ではありませんか。私自身が驚きました。
 甘口醤油は、過疎地にみられる独特の醤油などではないのです。甘口醤油はかつて海上に、蝦夷松前から日本海側を縦断し長崎や対馬や鹿児島・琉球といった海外との貿易口をつなぐ大輸送路が存在したことを今に伝える「食」の遺産です。海洋交易の華々かりし頃には、交易船のもたらす富で栄えた津々浦々の寄港地で、大いに人気を博した贅沢醤油であったのだと思います。時には、船旅に携帯され、海の男たちの船上のまかない料理の味をひきたてる味のエッセンスとして使われたことでしょう。また、輸出品として海を渡り海外の人の舌をも満足させたのでしょう。
 それが、日本海側が物資輸送の大動脈だった時代が終り、「裏日本」というあまり有難くない名前を頂戴した頃から段々と忘れられるようになり今に至っているのです。
 私たち甘口醤油のメーカーは、お蔭様で根強い地元愛用者の方々に支えられ、その味と手法を守っております。この機会にあらためて感謝申し上げ、益々のご愛顧をお願いしたいと存じます。
 そして、今回このホームページを読み甘口醤油に少しばかり興味を持って下さった甘口醤油未体験の方たちにも、ぜひともお試し戴き甘口醤油の良さを知っていただければ幸いだと思う次第です。

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