金屋の町屋はにしん釜御殿?

 そして、かつてのにしん釜づくりの盛況ぶりを今に伝えているもうひとつの遺産が、実は金屋町の町並みです。金屋の町屋は、北海道のにしん御殿と同時代、つまり明治から昭和初期に建てられた近代の建築物です。雪国ならではの太い梁と柱を用いた堅牢な枠の内や、細かい出格子(さまのこ)や袖壁を備えた雅な外観で知られていますが、内部の建具類や中庭などにも贅(ぜい)を尽くし、独特の風格を呈しているのが特徴です。近代の町屋建築の特色である和洋折衷様式も随所に見ることができます。そして、何より注目されるのは、玄関から千保川の河岸までウナギの寝床のように長く続く独特の構造です。つまり、前掲の喜多万右衛門家(『中越商工便覧』)の様子からも分かるように、金屋の町屋の多くは母屋の奥に中庭と防火施設としての蔵を配し、その奥に鋳造所と舟着場を設けているのです。これは、金屋の町人たちが住居と生業と舟運とをみごとに融合させて作上げた合理的な家屋のカタチなのです。
 このような金屋の町屋のなかでも特に立派なのは、にしん釜によって財を成した家です。にしん釜づくりで繁盛した町人たちが、互いに競い合うように贅を尽くした家屋を建築し、優美な町並みを作り上げました。北海道のにしん漁で大財を成した御仁の家が「にしん御殿」ならば、金屋の町屋は「にしん釜御殿」と命名してもよさそうです。

 金屋の町並みの成り立ちの特色を知る上でも、にしん釜は風化させてはならないまちの記憶だと思います。
チャノマは、雪国ならではの堅牢な枠の内づくり 太い梁と柱が見所
今の千保川 伏木港
蔵の扉にも贅を尽くした装飾
当ホームページの『高岡の町並み』「金屋町楽市」のコーナーには金屋町の魅力が満載。ぜひご覧ください。

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