守山城下町の賑わい
 守山城のあった二上山には、今でもかつて武士が住んでいたことを伝える様々な伝承が残っています。地元の古老の中には、本丸はもちろんのこと、二の丸・三の丸・大手門・馬屋・侍屋敷・空濠な
二上の石仏のやさしい表情
どの在り処を事細かにご存知の方がおられ、お話を伺ううち400有余年前のことはとても思えないような不思議な錯覚を覚えます。守山に居住した侍たちのこともいくらか伝えられており、例えば、守山城で起きた侍たちの小競りあい事件のことなど、侍の実名を交え今見てきたかのように詳しく語られるのです。話すと長いので話の内容は割愛しますが、「武士にとって、義理や面子がいかに大切であったかということですちゃ。」と、400年前に起こった事件を語る二上地区の人々の心の中には、守山城の侍たちがずっと生き続けているようです。他にも、二上山で侍の刀を拾ったという話、二上の山奥には侍たちがたくさん集まって隠れ住んでいる所があったという話、我が家の先祖は武士の出であるという話、先祖伝来の甲冑が伝わっているという話、二上山のどこかには埋蔵金・武具・宝物などが隠されているという話、二上山の古戦場の話など、二上山に侍ネタは尽きません。
 守山城の膝元には、現在の守護町から海老坂にかけて城下町が形成されていました。どのような規模の城下町であったのかは定かではありませんが、今でもこの地区には、「材木町・紺屋町・鉄砲町・柳町・屋敷町」などの城下町地名が残っています。それから、かつて城の石垣の石を運び上げる輸送路であったという「殿様道」と呼ばれる道もあります。また、古文献には、檜物(曲げ物)座・天秤(両替商い)座があったことや商い舟が行き交っていたことを示す史料も発見されています。商業はさかんであったようです。
 寺院は、なんと40ケ寺以上もあったそうで、守山城下町は、宗教的色彩の濃い町でした。高岡大仏のルーツといわれる1丈6尺(約5メートル)の木造大仏も、慶長14年の高岡開町にともない高岡に移転しましたが、もとは、二上山麓に建てられていたといいますからまさに宗教都市のような体裁ですね。そして、守山城下町は、婦負・射水・砺波の越中三郡の「首都」として多いに繁栄した町でした。
 先にも申しましたが、前田利長は13年に亘り、この守山城とその城下町の主でした。
 守山城下町は、どのような様子の町だったのでしょうね。近年、北陸では、朝倉氏の一乗谷遺跡の調査研究が進み、朝倉氏の城下町の一部が復元されましたけど、守山城下町にも類似するところがあったのでしょうか。一乗谷の城下町は100年以上に亘って朝倉氏の城下町として繁栄しました。武士のほかにも、僧侶・神主・医者・職人・商人・女・子どもと様々な人が住み、一説には一万人以上の人口であったとか。出土品の中には、お椀・曲げ物・陶器・すり鉢・ひき臼などの生活雑貨のほかに、紡錘・糸紡ぎ、それから手鏡・櫛・かんざし・お歯黒壷・紅皿などの化粧道具も出土しており女性たちの生活の様子も伺えます。また、将棋の駒や羽子板・独楽など子どもの玩具も出土しているそうですから、子どもたちも元気に城下町の通りを駆け回って遊んでいたのでしょう。
復元された一乗谷遺跡
整然と町割りされた城下町に、最盛期には一万人 を超える人が暮らしていたという。
 守山城下町も似た様相であったものかどうか。どのような人たちが住み、通りにはどのような人たちが行き来していたのか。「どこでもドア」のようなものがあれば見に行きたいものです。
 守山城に参勤する武士たち、虚無僧、山伏、寺院に届け物をする商人、通りに商品を並べる売り子、天秤棒を肩にかけた行商人、頭上に野の花々を乗せて運ぶ女、薬種を売る唐人、荷車を馬に曳かせるバクロウ、近隣の村人、こどもの手を引く母親など、様々な人たちが城下町の通りを行き交い、小矢部川にはたくさんの長舟や帆を立てた渡海船の姿も見られる。寺院からは釣鐘を突く音や僧侶たちの読経の声が漏れ聞こえ、城下の家々からは物づくりに励む職人たちの仕事の音が聞こえる。そして、城下町の周りには小金色の稲穂を垂れた田んぼが広がっている。守山城下町の時代から勇壮な獅子祭りなどはあったのでしょうか。なんて、想像は付きません。
 町人の中には、利長に眷属して尾張や伏見・近江・越前・若狭・能登・金沢などから来た人もいたでしょう。京都・堺などの商人たちも守山城下町を訪れたかもしれません。唐人や南蛮宣教師の姿も見られたのかも。また、守山城下町の町人の中には、物資輸送のために九州や小田原や奥州の戦場へ出向いたり、伏見城築城や京都の方広寺大仏殿建立の普請工事に連れ立った人もあったかもしれませんね。この時代における守山城下町と遠隔地との地域間交流は、私たちが思うよりずっと盛んであったのではないでしょうか。

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