まとめ
 高岡は、誰かひとりの偉人の功績によって銅像の町になったわけではありません。振り返れば、近世初頭にその発祥を持つ鋳物師たちの鋳金技術の伝統はもちろん、合金・彫刻彫り・生人形・仏像・着色などの改良に尽くした人々、そして、高岡へ新たな情報をもたらした商人や、高岡に銅像産業を提唱した新進気鋭の新聞記者、富山県工芸学校で教鞭をとり後進の育成に尽くした指導者たち、その人生を銅像づくりにかけた原型師たち、報徳思想の普及にいちはやく目をつけ二宮金次郎像を大量販売した人たち・・・・、実に多くの人々の人生を巻き込みながら高岡は銅像の町として発展したのです。
 高岡産の銅像は全国に散らばっています。外国にも高岡の銅像を見つけることができます。旅先などでばったりそれらの作品に遭遇したとき、私たちはあらためて高岡の銅像産業の裾野(すその)の広さを知らされるのです。
 高岡にはここで紹介させていただいたほかにもたくさんの銅像やアート作品があり、それらは町の大切な財産です。市民の中には、税金の無駄遣いだといって関心さえ持たない人もいますが、これらの銅像やアート作品を将来どのように活かしていくのかを、今改めて問い直さなければなりません。
全国各地で、パブリックアートはまちづくりに活かされています。銅像やアート作品は、住民の心を豊かにし、故人の偉業を未来に伝え、住民の交流の場となるような憩いの空間を創出し、美くしいまちなみづくりに役立ち、観光客の旅情をいざない、まちを輝かせます。しかし、この高岡において、もっとも大切なことは、銅器・銅像やアート作品への愛着、そして「ものづくり」への興味が次世代を担う人たちへ受け継がれるようにとの願いが込められていることでしょう。
 街中の銅像やアート作品たちは、無言のうちに次世代の「ものづくり」への関心を高め、審美眼を磨き、芸術やアートへの造詣を培います。加えて、街中の銅像やアート作品を今一度見つめなおし、さらに能動的に銅像やアート作品を活用していく必要があります。未来の高岡が世界から認められる「ものづくり」の町になるためには、今新たな種を蒔かねばならないのです。

※参考図書
『越中人譚 国際 林忠正』株式会社チューリップテレビ
『越中人譚 造形 本保義太郎』株式会社チューリップテレビ
『越中人譚 造形 中野双山』株式会社チューリップテレビ
『高岡史料』
『高岡新報』「高岡銅像論」井上江花
『高岡鋳物史話』飛見丈繁
『高岡銅器史』桂書房. 養田実・定塚武敏. 1988
『高岡工芸史料』2005 高岡市立美術館 藤井素彦

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