柿の漬物
 柿の漬物です。5月だというのにこの姿です。去年秋に収穫されたものを漬物にして半年間保存しました。作り方を「日本の食生活全集」で調べました。「聞書き福井の食事」には次のように柿の漬物が紹介されています。柿の漬物には渋柿を使います。「柿が多くなると、まだ青みが残っているときに傷をつけないようにもぎとり、きれいに洗う。大きな桶に1斗の水と3合の塩と柿を入れて、上にかえる草をかぶせる。1ヶ月くらい漬け込むと甘くなる。」柿の漬物は、渋みは全くなく、塩辛くなく、かすかな甘みが感じられ生柿に近いサクサクした食感があります。かつては、貴重な保存食として全国で広く作られていたようです。
 御住職曰く、柿は高山右近の好物であったとか。マニラ追放が決定し本行寺を旅立つ右近に、時の住職が彼の好物である柿を5つ差し出したところ4つを受取り、後のひとつは「またこの地に戻ってきた時にいただきましょう。」との意味を込めて置いて入ったという説話が寺に伝えられているそうです。
 不思議なことに、イタリア・イスラエルでは、柿を「kaki」というそうです。日本語と同じなのです。柿と「kaki」の語は大航海時代に日本から伝播したものらしいのですが、イタリアなどではあまりに身近なので外来語と言う意識はなく、多くの人は「kaki」を母国語だと思っているそうです。ヨーロッパの「kaki」は、かつての日本とヨーロッパとの食文化交流の証だというわけです。そう考えると隠れキリシタン料理に柿が登場するのも何となくうなずけますね。
 本行寺の回りには、多くの柿木が見られました。秋には、たわわに赤い柿の実をつけるのでしょうね。高山右近の知行地があったと言われる志賀町にも、柿の木が多くみられます。中でもころ柿は、町の特産品。志賀町は「ころ柿の里」として知られています。志賀町の柿は一説には高山右近が植えたものと言われているそうです。

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