キリシタン料理を予想するU.
 長崎県の生月島にも「カクレキリシタン料理」が伝承されています。その料理など、或いはヒントになるのかも知れません。長崎県が出版した『長崎の食文化』の中の「カクレキリシタンの行事と料理」(宮崎賢太郎記)には、長い禁教時代の宗教弾圧にも耐えて信仰を守ってこられた、生月島の信徒の方たちのカクレキリシタンの行事と行事食が紹介されています。

  一の善 お神酒とセージ
  二の膳 煮しめと大根なます
  三の膳 御飯と吸い物
  正月行事には、餅

 一の膳のお神酒は清酒。セージとは、何かと申しますと刺身・クジラ肉・スルメなどの生臭ものだそうです。これは、教会のミサにおける葡萄酒とパンが土着した姿であろうと宮崎さんは述べておられます。二の膳の煮しめの材料は、蓮根・里芋・ごぼう・しいたけ・人参・かぼちゃ・筍・こんにゃく・厚揚げ豆腐・昆布巻きなど。大根なますは一皿に二山盛ってだす独特の盛り付けがされるそうです。三の膳の御飯も盛り付けに特長があります。白米を茶碗に山のようにとても高く盛り付けるのです。米の乏しい時代にあっては最大のご馳走でした。村の長老「おやじ様」の御飯茶碗だけには「きせ」と呼ばれる蓋が必ずついて、最高役職者の権威を示すこととなっています。吸い物は、セージの刺身を取ったアラか魚のすり身団子の澄まし汁です。これらの膳は、季節折々の生月島の年中行事に、また結婚式などの祝い事に共通してだされるもの。正月には、これに加えて「餅」が必ず登場します。餅は長老「おやじ様」が「さんじゅわん様の水」という聖水で清め、餅に「お魂」を入れます。
 ここに見る限り、生月島のカクレキリシタン料理には、キリシタンならではといった特別な要素は希薄のように思えます。まさに、日本に土着した姿と言えましょう。現在もますます土着化?が進みチキンのから揚げに、フライドポテト、ハンバーグ、えびフライといったお子様ランチ系メニューも登場しているといいます。能登の隠れキリシタン料理もこのように日本土着の姿をしているのでしょうか。
 「セージかぁ。能登のキトキトの魚の刺身、いいなぁ。長兵衛醤油を持参するのだった。」
 御飯を高く盛って食べる奇祭は、能登の輪島市にもあります。毎年2月にその年の豊作を祈念して行われるこのお祭りは「もっそう祭り」と申します。「もっそう」は円筒形の木枠のことで、祭りではこれに約五合分のご飯を入れ、椀に移して15センチほどの高さの円柱型に盛ります。ほとんどの人は食べ切れず家のお持ち帰りになるとか。
 「山盛り飯にはぐっとそそられる。あぁ、腹が減ってきた。」
 富山県人の性でしょうか。結局たどりつくところは「白米」への憧れのようです。
 各駅停車の旅にも飽きて、思考もだいぶ鈍ってきたところで七尾駅に到着です。

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